寺坂真貴子です

弁理士です。

内閣府クールジャパン戦略へのパブリックコメントに提出遅れました

土曜日締め切りなら23時59分だと思って油断していたら17時でした。
そうですよね……。
芦原妃名子さんの事件に暗澹としていたとか、
他にやることもたくさんありまして(インボイス対応確定申告に暗澹とするとか)忙しい時期でしてとか
というのは他の人も全くおなじですから言い訳にならないですね。
本当にいい機会をもらったのにふいにして日本の将来を担うひとびとに申し訳ありません。
ぎりぎりまで整文しようとしたけれど内容もいまひとつです。
でもやはり惜しいので以下に私見をなげておきます。
乱暴な論旨、誤字脱字などご容赦いただければとおもいます。

《要旨》

自覚のない個人事業者である著者・実演家を社会にうまく組み込む
1.マイナンバー登録SNSインボイス登録免除(代替案:プロダクション契約締結時の重要事項説明の義務化)
2.著作人格権の強化、固有データ公開権の新規創設(含:肖像権、広義プライバシー権)および重要コンテンツへの遡及適用
3.2の公開権創設および表現規制法を前提とした、わいせつ罪の改正、ならびにコンテンツ棲み分けの緩和と強化

総論 
クールジャパンの遂行においては、自覚のない個人事業者たる創作者・実演家を社会にうまく組み込む方法が求められているが、世界の最先端をいくクールな日本でも金がからんだりで失敗しがちである。

意見1
インボイスの失敗以前から、創作者の間では物々交換・電子マネー・イイネを得がたい報酬として認める機運がある(内田樹「贈与経済」・岡田斗司夫評価経済社会」など参照)
しかし税金・年金だけは現金でおさめなければならない。このため個人事業者は無理をしてでも金銭への変換をしなければならない。
クールジャパンを推進するためにはこの際に搾取がおこらない方法を模索すべきである。
報酬の得られるSNSマイナンバーカード登録によるインボイス登録免除を行うなど。

意見1.5 創作物利用契約締結時の重要事項説明の義務化
 今年一月末に漫画家芦原妃名子さんが、ドラマ化にあたり作品改変をされ、テレビ局を通じ脚本家へ抗議をしたものの納得いく説明がうけられず自身が巻き取ることとなりドラマ作品も満足にしあげられず自殺をする事件があった。この事件を受けて日本の創作者の多くが多大なショックを受けている。
 一部の創作者は、出版契約・映像化の不平等契約が以前から存在したと主張している(雷句誠佐藤秀峰などの漫画家が該当出版社と訴訟寸前のもめ事にいたったし、無料公開されている売れっ子漫画家×うつ病漫画家「https://www.pixiv.net/user/67836452/series/114674」も出版契約しようとした個人創作者の出会った社会の暗部をえぐりだし380万人に閲覧され15万イイネをもらう人気作品となっている)
この騒ぎでテレビ局や出版社の株価がストップ安となった。日本のコンテンツのおかれた状況は株価を通じて海外にも直接に影響を及ぼし、あるいは及ぼされている。まさにクールジャパンの定着を悪い面から知ることになった。
 しかし出版社・テレビ局は現在のところ感情論に終始しており、第三者調査委員会をたてることもしていない。「当人の問題であるし、その当事者はすでに死亡した」という理由で改善策を立てないまま、なんとかうやむやにしようとしている。
 実際、著作権侵害訴訟は民事であるから裁判になっても和解が強く進められ、出版社に改善指導が入ることはない。
 SNSでは創作者にとって、描こうとした深いテーマをメディア化の際に浅く改変されることは魂の殺人にも当たるのだという血を吐くような訴えも見られた。
 出版契約(=版権、複製権契約)を文書で交付することを義務づけ、「著作人格権の委譲」の項目を含む著作権契約を違法化すべきである。
 さらに、世間では事件の再来を防ぐため出版エージェントを育成し、あるいはAI化して配布すべきとの声もある。https://www.cinra.net/article/202401-sexytanakasan_iktayしかしこの場合、出版エージェントは経理・税制、請求書作成、差し止め訴訟、経営、著作権、メディア倫理、海外の表現規制などに精通しつつ、不安定な創作者のためのカウンセリング者も出来なければならない。
 これは普通に考えて一人でこなせる業務量ではないから出版社などの編集担当者がチームで代行しているケースが多かった(スタジオをかかえる大手は除く)。その編集担当者によるフォローができなかったのが今回である。
 したがって、宅建取扱主任のように契約時の重要事項説明の義務化などをおこなう。個人事業からチームで補えるならそれにこしたことはない。
意見2 著作人格権の強化、固有データ公開権の新規創設(含:肖像権、広義プライバシー権)および重要コンテンツへの遡及適用
 創作は本人の個性を直接に表すものであり広義のプライバシーでもある。SNSに無料で閲覧できる形で絵を投稿していても作者と切り離し意図しない形で再利用されることは全く想定も許諾もしていない。そのためAIの使用でロンダリングしつつ本人の創作物の個性を真似られることを不利益を被っていると感じている声が非常に多いし、そもそも学習素材を許可したおぼえがないのに30条の4ができて生成AIができていたという声も多い。また現在はより状況が悪化しており、AIにおいて名前をいれていないのに特徴をいれただけで学習元画像がほぼ同じ(鼻の影の位置だけが違う程度)画像として出てしまうケースも多く出ているし、i2iにおけるLoRAの技術がすすみ10枚程度の素材があれば画風を盗んで真似たい絵柄の絵をAI生成させることができるようになっている。
これほどのAIの急速な進化はだれも予測できなかった。
さらに画像生成AIの根本にあるデータセットに収集された58億枚といわれる画像の中には公開が違法となるコンテンツ(実在児童のポルノ写真)など表現規制の対象、いわゆる違法な画像が含まれていることも明らかになった。(これに関して児童ポルノをダウンロードして保管することは、児童ポルノ禁止法7条3項に該当するから、児童ポルノ画像を学習済み素材として含み、かつ出力できるデータセットは違法であるということもできる。さらにわいせつ罪裁判での最高裁は、(新しい)刑法175条の「頒布」の意味を、ネットを通じて不特定多数の者のパソコンにわいせつ情報を記録させることだと解釈した(出典:園田寿 https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/813c91adcf61951e0ef53940f5ff9820383158cf 「わいせつ動画、米国サーバでもアウト! その理由は?」)という経緯があるため、日本から実在ポルノ画像をアップロードした場合はこれも違法行為であると考えられる。)
しかし、ではポルノなど表現規制の学習素材を使用せず、著作者が学習利用を意図していない著作権侵害コンテンツから学習ずみのAIはどうだろうか。著作者に不利益を与えるものとして削除させようにも、今更、過去に遡って不利益の証拠を出すことは現実的には難しく、裁判をして確実にデータ削除をさせ勝てるみこみもうすい。したがってただでさえ短い現役期間を勉強や創作についやそうと時間に追われる創作者にとっては実質的に泣き寝入りを強いられているといえる。
 このケースからみても現状の「だれかが不利益を被ってから対応する」後追い的法改正では適法な創作や表現を支える限界が来ていると言わざるを得ない。生成AIの弊害(金銭的損害だけではなく名誉感情や相場崩壊なども含め)は創作者には自明だが今からでは防止手段が考えられない。
 もちろん日本でデータセットの制作そのものを違法化し、過去公表作の著作権侵害まで認定して遡及して廃棄し、新しく自作素材だけ学習したAIを作成せよと命じることもできなくはない。しかしすでにオフライン利用できる学習データセットが存在する(iphone向けアプリdraw-thingなど)のだから、この形で、各地に学習済みデータセットというコアになるデータがばらまかれてしまっていることは明らかだ。戦争のように莫大な技術力をもって迅速に対応しないと手遅れである。
 少しでも手遅れになれば、現行のデータセットは貴重で価値が高いことは知られているから、どこかまた別の外国からどこからともなく複製データと生成物が流出してくる。
 結論として、AIは7000人のデジタル絵画創作者たちの知らない間に生まれた鬼子だが、いったん生まれてしまった以上一つの国の一つの法律だけでは殺しきれない。よって児童ポルノなどの規制と同様に、出口規制としての原著作者による拡張された公表権が必要というふうに私は考えている。
 これにより自分に深いかかわりのあるデータすべてをだれもが適切にコントロールして意図した範囲のみに公開するようになれば、芦原妃名子さんも脚本家のかきこみを直接目にすることはなかったし、不幸な自死も起こらなかったのかもしれない。

 3.公開権創設および表現規制法を前提とした、わいせつ罪の改正、ならびにリテラシーのみにたよらない棲み分けの強化
 日本のわいせつ物・R18基準と外国のそれが大きくずれている。昨日ユーザー数が400万人を突破したSNSブルースカイでは日本語でこのような警告を守ることとされている。
・コンテンツの警告なし(無害なコンテンツ)
・「提案」(成人向け)
・「ヌード」(エロくないが裸。裸体の彫刻など)
・「ポルノ」(エロい)
さらに一般に米国の表現区分は
・制限なし
・Sensitive(「見たくない人がいる」。政治、宗教、戦争、論争)
・NSFW(「職場で見るのに適しない」、ドッキリ・いたずら・水着・パンチラ・バニースーツ)
・Mature(「成人向」。下着すがた、薬物、出血、虐待、ヘアヌード、トップレス)
・Explicit(「露骨」。殺人、汚物、ゴア、体液、局部露出、前戯およびセックス)
となっていて、explicitなものでも見たい人は見て見たくない人はブロックすればよいとなっている。そこには「性的」とお上が決めた表現を一律に排除する法律もなければ、わいせつ罪のがれのために陰毛や乳輪を描かないことによる幼形表現化のジェンダーゆがみもない。
 
「善良な性的秩序・性道徳を維持するという意味でのわいせつ規制はもはや維持できるものではなく、わいせつなものを無理やり見せられないという個人の権利を保護するとか、あるいは青少年保護といった観点から、規制を根本的に考え直すべきではないかと思っています。(同上)」

自分もそのように考える。
★★★★★★★★★

さて、実は2023年末にあった文化庁むけのパブコメの最後に付録でこんなことをかいておりました。

表現規制について 
現在、シンガポールのフィギュア販売サイトが許諾をとらずに日本アニメキャラフィギュアを販売している(おそらく個人フィギュアメーカーの販売仲介サイト)。https://www.gkcollectors.com/ (成人向けなので閲覧注意)
私はこのサイトをみて衝撃を受けた。出来がよく魅力的だが日本では売れない。
掲載されているフィギュアは多数あり予約制で高額である。いずれも許諾マークがないから未許諾と推測できる。シンガポールベルヌ条約の加盟国 であるため、日本を含む加盟国の著作物の著作権シンガポールでも保護されるはずなのだが、日本コンテンツホルダーの機会損失である。
さらにフィギュアには著作者の許諾を最初から取る気がないために乳房や股間の露出や暴力表現を含むものも含まれる(しかもサイト全体が高額な成人向け物品の販売サイトであるからゾーニングせずに並べられている)。これらはポルノ彫刻でありまた商品名が商標侵害であり知的財産権侵害の塊なので日本人が仮に購入しても、日本税関で没収される。日本人は許諾や購入や出品ができないためいっさいこのサイトのコンテンツにかかわることができない。海外から海外へと派生コンテンツ収益がすべて流れていく状態になっている。
この事態を見るに日本の厳しすぎる表現規制、特にわいせつ物関連罪は日本のコンテンツ産業の足をおおきくひっぱっている。
もちろん入手した性的コンテンツを衆目の前に放置し加害的公表することはよくないが、マイナンバーカードやクレジットカードを用いた年齢・国籍の確認をして成人がゾーニングしながら購入し個人で楽しむ分には「わいせつ」「ひわい」というほどのものでもないのではないだろうか。そもそもわいせつの「せつ」はハレに対するケであり個人的、公にするべきではないという程度の意味である。
また一方で、日本国内には個人表現者に対する表現規制がつよい。特に個人コンテンツ売買サイトにおいて昨年からカード会社による児童ポルノ・虐待・暴力に関する表現規制が始まっている(例外はDMM)。クレジットカードで米国AV(モザイクがない)を購入決済可能なのに、日本国内で虐待・拷問の内容が含まれる挑発的なアマチュア小説作品へ支援的購入しようとしても決済させてもらえないのである。
日本人の成人向け創作者はわいせつ罪や表現規制に幾重にもしばられ、また自分の表現が「下手」でだれかにとっての地雷にちがいないという「常識」にも苦しめられている。
したがって、日本人もアメリカと同程度に成人向け表現を自由化すべきである。「単なる性交(または性交類似行為)の表現物を身元確認ずみ成人向けゾーンで展示販売することはわいせつ罪にあたらないこと。すなわち成人の人体に当然存在する性器や乳房(乳輪や乳首)、陰毛・腋毛の表現が即座に違法とはいえないこと」ことと、「児童ポルノ法、リベンジポルノ法、ゾーニング破りや脅迫・強要・非セーフセックスを含む加害的公表は犯罪にあたる」をセットで導入してほしい。
少子高齢化社会で有料表現の受け取り手は総じて高齢化しているのに、50代の大人がジャンプを読んで乳輪や陰毛や腋毛すらない児童的表現(しかし乳房だけは乳首がないのに整形済みのように不自然に大きい)の女性キャラクターに性的シンボルを担わせる状況は非常に不自然である。
一方で成人向け動画投稿サイトの現状をしらべていたところ、アメリカの動画投稿サイトにうっかりいきあたった。タイトルとサムネイルからは50代60代の夫婦が自らのゴムなし性交を撮影して投稿していることが把握できた。動画再生はしないものの、バナー広告にもモザイクがない。こちらもいい年をした成人なのだから成人同志の赤裸々な夫婦の営みタイトルをみて過度にわいせつという印象を受けることはない。へえ仲が良いな、楽しそうだな、意外と清潔感がある、と思う程度である。個人的には特に、成人同志のおもいやりあるおだやかな性交などは少子化を解消する崇高な行為であるから特段「卑しい」「猥らな」ひわい表現ではないと考えている。
AVについてしらべたところアメリカでは局部モザイクがないが、暴力虐待表現、児童ポルノ、強要、商業ゴム無し動画のほうが強く規制されているのだそうだ。そのほうが、かえって女性や未成年の保護および性教育に配慮された表現である。
このように日本では表現規制が非常に複雑怪奇になっており個人表現者にとって理解不能であり不利である。
わいせつ罪の存在にはさらなる弊害もあり、日本では中高生への性教育も先進国の中では大幅に遅れている。女性や母性を保護するためのアフターピルや低用量ピル、生理用品や子宮がん検診・ワクチンに対する偏見も非常につよい。妊娠出産したい女性への大きなハンデとなっている。
この度、表現規制のねじれをただし、規制対象に加害的公表というわかりやすいものとし、ゆるめるべきものはゆるめ、加害的表現は新たに規制し、成人向けコンテンツのプラットフォームをアップデートして、成人の間で合法に成人向け表現が流通すべきようにすることで、女性差別の解消や少子化対策、クールジャパンでの成人向けの表現による収益などという複数の効果がみこめるのでぜひとも法改正をお願いする次第である。

これわりと過激派なことをいっているので女性からは反発があるかもしれませんが、ぜひ内閣府あてにお知らせしたかったんで本当に痛恨です。